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おしゃれ童子


今月からオーナーの石見だけでなく、TWTGスタッフみんなで綴っていきたいと思います。今回は、靴磨き以外の運営全般を担当している裏方のMが書きます。

「どうしようかなぁ」と考えてみたのですが、根が真面目な私には真面目なことしか書けないという結論に至りましたので、お洒落について、色んな角度から真剣に考えていこうと思います。

ではでは、さっそく、「vol.1 太宰治 おしゃれ童子」

この表情。洒落っ気がにじみ出ています。

何事にも失敗は付きものだ。お洒落も然り。むしろ、ファッションほど些細なミスが致命傷になり得るものは、少ないかもしれない。たとえば、靴下ひとつ間違えただけで、完成度もテン

ションもガタ落ちしてしまう。

私自身、これまで何度失敗してきたかわからない。年齢と共に進化を遂げているはずなのに、今でも「やっちゃった」という日はある。 しかも不思議なことに、失敗するときはいつも、家を出るまで気付かない。たいてい、街中で窓ガラスに反射した自分自身を見て「あー、変だ」とわかる。

そうなれば最後、その場で新しく買って着替えるか、さもなければ帰ってしまいたくなる。用事があって外出したのに、最寄りのお店に吸い込まれてしまって本末転倒だ。それくらいファッションは気分を左右する。

太宰治の短編集『きりぎりす』の一編「おしゃれ童子」は、ファッション好きなら誰しも身に覚えがあるであろう、そんなお洒落への執念をうまく描いた作品だ。 作者を連想させる青年の奇行に笑いつつも、共感できる。 (以下、内容に触れますので、作品を楽しみたい方は要注意です)

主人公は小学生のときから、絣の着物の下にわざと純白のフランネルシャツを着たり、納得するまで三度もマントをあつらえたり、理想の猿股を求めて街中を歩き回ったりする、題名通りのおしゃれ童子だ。

しかし大人になってからも、彼は「おしゃれ青年」ではなく「おしゃれ童子」でありつづける。そこがこの作品の面白いところ。 こだわり抜いて作った外套のウケが悪いのに耐えられず一人泣きべそをかき、心を癒すため葡萄酒を飲みはじめ、芸者遊びをし、果ては落ちぶれて服を思うように買えなくなる。それでも主人公は、他人から着物を借りてまでデートに出掛けていく。 彼は一度こだわりはじめると、他のものが目に入らなくなってしまうのだ。欲しいおもちゃを手に入れるまで泣き喚く子供のように、これと思ったらこれしかない、そんな様子が可愛らしく描かれている。

程度の差はあれ、現代のお洒落好きにもこの主人公のような、必死さが感じられるように思う。ファッションは、いくつになっても童心にかえって楽しめるものの一つなのかもしれない。

そういえば、こだわりが強く、妥協を知らないと言えば、私のごく身近にも一人いる。 オーナーの石見豪だ。 そんな石見が去年から「欲しい欲しい」と言っていたアイテムがある。 先月末よりついにTWTGでも取り扱いを開始した英国製、Rutherfordsのバッグだ。

選び抜かれた材料を使い、職人が手仕事で仕上げたこのアイテム、太宰の主人公のように生粋のお洒落さんなら、堪らないはず!

て、結局宣伝か~い!(笑)

今回はこの辺で。

お読みいただきありがとうございました。

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